2013年04月02日

金融緩和と物価

安倍晋三政権の経済政策、アベノミクスは、実施に移る前から、市場に歓迎され、久しぶりの円安と株価上昇を呼び込んだ。
極めて順調な滑り出しで、発足3か月の安倍政権の内閣支持率も高い水準を維持している。

4月に入って、円安、株高は一服かと思わせる動きが出ているが、アベノミクスに共鳴する日銀の黒田東彦体制も発足し、いよいよ政策実施の本番を迎えており、大胆な金融緩和、機動的な財政運営、それに民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢から成るアベノミクスによって、果たして日本経済はデフレ不況から脱却できるのか、市場が気にし始めたと言えるのではないか。

このうち一本目の矢の積極的な金融緩和策については、これを支持する意見がある一方で、疑問視する議論が続いている。
例えば、2%の物価上昇という10数年来見られなかった上昇率を目標に掲げているが、金融緩和という手段で本当に実現できるだろうかというものがある。

これに対し、黒田新総裁は国会での説明で、物価が低下する要因には安値輸入品の増加、流通の効率化、家計の低価格指向などがあると指摘したうえで、これまでにない大胆な金融緩和の方針を強調した。

また、物価が2%を超えて上昇し始めたら、デフレ脱却どころか、インフレが止められなくなるのではないかと出口を懸念する議論もある。
インフレを止めるには、金利引き上げが必要になるが、長期金利が上昇すると、国債の利払いの面で財政負担が重くなるため、財政当局と日銀との利害が対立し、非常に難しい政策運営を迫られることになりかねないというのである。

消費税が来年4月に5%から8%に引き上げられ、さらに翌2015年10月には、10%になる予定である。
消費税が上がると、物価もかなり上昇するとみられる。
日銀の物価2%引き上げはこれとは別であり、併せると物価上昇の負担は重くなりそうである。

消費税引き上げまでの1年間は駆け込み需要が広がり、景気もよくなるかもしれないが、その先は賃金などの収入が増えなければ、生活が苦しくなることも予想される。

こうしたいくつかの懸念を払しょくするには、政府・日銀がデフレ脱却とその後の影響についての手法や道筋について、もっと丁寧に分かりやすく説明する必要があると思う。



同じカテゴリー(ニュースへのコメント)の記事
 サッチャリズムの思い出 (2013-04-29 11:05)
 失政のつけ (2013-03-17 16:06)
 円安頼みの限界 (2013-02-23 19:42)
 社会面の記事から (2013-02-10 19:38)
 「アベノミクス」スタート (2013-01-12 22:33)
 ムラ意識問題 (2012-12-13 22:17)

Posted by hamachan at 23:10

プロフィール
hamachan
hamachan
浜野崇好(はまのたかよし)

経済コラムニスト



1935年6月宮崎市生まれ



NHK経済記者・解説委員を経て、宮崎公立大学学長・理事長。

退任後、フリーの経済コラムニストとして活動。



クローバー浜野崇好の

オフィシャルサイト

経済コラムニスト 浜野崇好 オフィシャルサイト

QRコード
QRCODE
みやchan インフォ
みやchan ホームに戻る
みやchan facebookページみやchan twitter
削除
金融緩和と物価