2012年11月23日

日銀、目覚まし時計論

日銀の白川方明総裁は11月21日の記者会見で、ある経済学者が以前使った言葉として「中央銀行は経済における目覚し時計のような役割である」と述べている。

つまり、朝、目覚まし時計が鳴ると、その瞬間は起きるのが辛い。
しかし「一定の条件が揃っていた場合に、長い目で見た経済の安定、あるいは人々の生活の安定を考えた上で警告を発していくのが目覚まし時計である」というのである。

この目覚まし時計論は、デフレ脱却のためには、「日銀に無制限に建設国債を引き受けさせるなどの大胆な金融緩策和政策が必要で、そのためには日銀法の改正も視野に入れる」という主旨の自民党安倍総裁の発言のあと、記者の質問を受ける形で、一般論として述べられたもので、日銀の立場で精一杯の反論を試みたものとみられている。

中央銀行の独立性は、世界各国で尊重されており、日本でも日銀総裁は、5年間の任期途中で解任することが簡単にできないようになっている。
政治が日銀の金融政策に介入することは法的に排除されているのである。

一層の金融緩和が必要という主張は、エコノミストの中にもあるが、目覚まし時計がうるさいからと言って、法律を変えて抑え込もうとして良いものであろうか。

この問題については、多くのメディアが日銀の独立性を侵すべきでないとして、「白川方明総裁の言葉にも耳を傾けるべき
」(日経社説11.21付)などと政治の介入を批判してる。

問題は、安倍総裁の発言のあと株価が上昇するなど、追加的な金融緩和を求める圧力が強まっていることである。
その理由の一つは、日本では財政にゆとりがないため、金融面の景気対策に期待する空気が強いのかもしれないが、日本はこれまでも金融緩和をずっと続けてきており、これによって、マネーの量は、他の欧米先進国並み、あるいはそれ以上供給する体制になっているとも言われている。

それでも緩和の効果が出ないと言うのは、白川総裁の言葉を借りて言えば、「マネーの量そのものより、マネーが実際に使われる」ようになっていないことに課題があるのであろう。
マネーがもっと使われて、マネーの回転速度が上がるような政策や努力が大事ということである。

そのためには、成長戦略を確立し、そこにヒト、モノ、カネなどの資源を集中させ、規制の改革を進めることがより重要なのではないか。




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Posted by hamachan at 21:16

プロフィール
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浜野崇好(はまのたかよし)

経済コラムニスト



1935年6月宮崎市生まれ



NHK経済記者・解説委員を経て、宮崎公立大学学長・理事長。

退任後、フリーの経済コラムニストとして活動。



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