2012年09月17日

「原発ゼロ」政策の社説読み比べ

9月15日付け主要各紙の社説は、前日、野田政権が関係閣僚の会議で決めた「2030年代に原発ゼロを目指す」という革新的エネルギー・環境戦略を一斉に取り上げた。
このうち、朝日、読売、毎日、日経、産経それに西日本の6紙の社説を読み比べて見よう。

これら各紙の原発に対する考え方は、かねてから知られており、この日の社説もそれぞれの主張に従ったものであったが、それでも、並べて読むとこんなに違うのかと、あらためて考えさせられた。

原発ゼロ政策に反対する3紙の見出しは、「原発ゼロ政策、即時撤回して『25%超』に 」(産経)、「『原発ゼロ』は戦略に値しない」(読売)、「国益を損なう『原発ゼロ』には異議がある」(日経)と真向から「原発ゼロ」を否定している。

これに対し残り3紙は、「原発ゼロを確かなものに」(朝日)、「実現への覚悟を持とう」(毎日)、「脱原発政策、きしみが増すのは当然だ」(西日本)と、脱原発に向けた政府のエネルギー政策の大転換を肯定的に評価し、実現に向けて山積する課題の克服を訴えたものである。
まさに、国論を二分していると言える。

脱原発政策反対派の最大の主張は、原発に代わるエネルギーの確保が難しく、経済・雇用が深刻な打撃を受けることを懸念するものである。
中には「『失われた20年』に『エネルギー喪失の20年』を継ぎ足す愚行」(産経)だという記述がある。
また、世界の多くの国が原発推進に向かっている情勢の下で、「『原発ゼロ』は日米協力に影を落としかねず、国際関係への配慮を欠く」(日経)という指摘もある。

しかし、6紙がほぼ共通して指摘しているように、今回の政府の新戦略には「原発ゼロ」に向けて「あらゆる政策資源を投入する」と言うだけで、その道筋は具体的に描かれていない。

さらに「原発ゼロ」と言いながら、使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルの継続を打ち出している。
再処理に関わっている青森県や米仏などへの配慮かと見られているが、その再処理で「日本は既に原爆約4000発分に相当するプルトニウムを保有している」(毎日)と言うのに、政府は今後、どうしようとしているのだろうか。

2030年代に「原発ゼロ」とする道筋は、まだまだ確かなものではなさそうである。
それにしても、国民の大多数が福島の事故で見られたような原発の巨大なリスクを心配しなくて済むようにならないと、「原発ゼロ」の世論はなくならないのではないか。


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Posted by hamachan at 16:47

プロフィール
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浜野崇好(はまのたかよし)

経済コラムニスト



1935年6月宮崎市生まれ



NHK経済記者・解説委員を経て、宮崎公立大学学長・理事長。

退任後、フリーの経済コラムニストとして活動。



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