2011年04月20日

不適切なフクシマ原発の「情報開示」

東日本大震災から1ヵ月以上たち、想像を絶する地震・津波の惨状と、いまだに先が見えない東京電力福島第一原発の最悪の事故が人々の心に重くのしかかる状況は変わらないが、それでも、地震・津波の被災者の間からは復興を模索する動きが次々と伝えられるようになって、いくらかほっとさせられる。

国連によると、世界各国から日本に届いた義援金は4月13日現在で、545億円となり、これに支払い表明分を加えると864億円になり、日本は、世界一の援助受け取り国になる見込みだと言う(日経4.17付)。
この中には、1人当たり国民所得500ドル程度のマダガスカルやルワンダ、政情が安定しないスーダンやアフガニスタンも含まれている。
長年、世界トップ・クラスの政府開発援助国だった日本が世界の人々から、こんなに同情されているとは‥

さらに、巨大地震、大津波、原発被害と三重苦にあえぐ日本国民は、極めて冷静に行動し、店に押し入って荒らしたり、品不足の商品の値段を吊り上げたりしなかったと、その規律と礼儀正しさが世界中の賞賛を浴びた。

その一方で、フクシマ第一原発の先行きについては、避難を余儀なくされている方々はもちろんのこと、世界中が事故の収束に手間取る日本の対応を苛立ちと疑念の眼で見ている様子である。
「情報開示」は、客観的な裏付けを基にして、いち早く丁寧に分かりやすく行うのが鉄則である。
もし、それが出来ない場合は、その事情をきちんと説明し、考えられる予測とその対応策を示さなければならない。

それが今回は、最初の段階から適切でなかった。一般の人々が全くどうなるか分からない中で、水素爆発などによる放射性物質の漏れが報じられ、濃度が低いとは言え、放射性物質の汚染水ほぼ1万トンが周辺国にきちんとした説明もなく、海に放出された。
また、原発事故の深刻さを示す国際的な尺度によるレベルを政府は、事故後1ヵ月たって、「レベル4」から深刻な事故であることを示す「レベル7」へと引き上げている。これらの影響が今後どうなるのかも具体的に情報を開示してもらいたいものである。

これまで経験のない4つの原子炉による複合的な事故で、想定外のことであったとしても、政府や東電などの関係者の対応はいかにも遅すぎるし、不十分であった。

4月17日になって東電は、原発の安定には6~9ヵ月かかるという「工程表」を発表した。
今後の見通しを具体的に示したのは、初めてである。安定するまでに時間がかかり過ぎるという不満の声もあるが、それよりも6~9ヵ月という数字の根拠が明らかでなく、この工程表の信頼性が問われている。
世界中で納得が得られる情報の開示がなければ、日本人に対する賞賛など吹き飛んでしまい、日本の国際的評価は地に落ちてしまう恐れがある。



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Posted by hamachan at 15:23

プロフィール
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浜野崇好(はまのたかよし)

経済コラムニスト



1935年6月宮崎市生まれ



NHK経済記者・解説委員を経て、宮崎公立大学学長・理事長。

退任後、フリーの経済コラムニストとして活動。



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