2011年05月27日
「風評被害」を食い止めるには?
福島第一原発の事故の影響で、東日本の農水産物が売れなくなったり、日本から脱出した外国人がなかなか戻らず、海外からの観光客も大幅に減少している。
好評を持続してきたmade in Japan の製品を買い控える動きも続くといった「風評被害」が容易に収まらないのである。
これに対し、5月20日、米国で開かれたAPEC (アジア太平洋協力会議)の貿易担当相会合では「WTO(世界貿易機関)ルールに反する差別措置を控える」と明記した議長声明が採択され、原発事故に伴う「風評被害」の防止をサポートしてくれた。
また、そのすぐ後、東京で開催された日中韓の首脳会議でも、中韓の首脳が被災地を見舞い、福島産のサクランボを口にして、日本産品の「風評被害」防止について、十分ではないにしても協力する姿勢を示した。
26日からのG8(先進国首脳会議)でも風評対策が話し合われると期待されている。
こうした努力にもかかわらず、「風評被害」の防止が進まないのはなぜか。
何よりも、原発事故の処理が進まず、いつ終わるのか分からないことによる不安感がある。
さらに次第に明らかになってきた事故直後の東電や政府当局の対応が不適切で、公表される情報も二転三転するなど、事故処理の情報開示に対する信頼性が回復していないこともあるだろう。
この点に関連して言えば、最近、新聞などで大きく取り上げられるようになってきた東電社内その他の「原子力村」の存在も問題である。
特に東電の原子力部門は、専門性のベールに覆われて、社内でも閉鎖的になっており、一種の「伏魔殿」だと言われるくらいである(朝日5.25付)。
これでは、的確な事故の情報がきちんと表に出るはずがなく、将来の原子力活用の是非を判断することも難しい。
ひと口に「風評被害」と言っても、よく見るとほかの要因で製品の魅力が失われている場合もあるようであるが、とにかく原子力を日本の将来のエネルギーの中でどう位置づけるかを決めるには、まず原子力の情報を正しく分かりやすく、速やかに開示できる体制づくりが欠かせない。
その上で国民的な議論をする必要性を痛感させられる。
好評を持続してきたmade in Japan の製品を買い控える動きも続くといった「風評被害」が容易に収まらないのである。
これに対し、5月20日、米国で開かれたAPEC (アジア太平洋協力会議)の貿易担当相会合では「WTO(世界貿易機関)ルールに反する差別措置を控える」と明記した議長声明が採択され、原発事故に伴う「風評被害」の防止をサポートしてくれた。
また、そのすぐ後、東京で開催された日中韓の首脳会議でも、中韓の首脳が被災地を見舞い、福島産のサクランボを口にして、日本産品の「風評被害」防止について、十分ではないにしても協力する姿勢を示した。
26日からのG8(先進国首脳会議)でも風評対策が話し合われると期待されている。
こうした努力にもかかわらず、「風評被害」の防止が進まないのはなぜか。
何よりも、原発事故の処理が進まず、いつ終わるのか分からないことによる不安感がある。
さらに次第に明らかになってきた事故直後の東電や政府当局の対応が不適切で、公表される情報も二転三転するなど、事故処理の情報開示に対する信頼性が回復していないこともあるだろう。
この点に関連して言えば、最近、新聞などで大きく取り上げられるようになってきた東電社内その他の「原子力村」の存在も問題である。
特に東電の原子力部門は、専門性のベールに覆われて、社内でも閉鎖的になっており、一種の「伏魔殿」だと言われるくらいである(朝日5.25付)。
これでは、的確な事故の情報がきちんと表に出るはずがなく、将来の原子力活用の是非を判断することも難しい。
ひと口に「風評被害」と言っても、よく見るとほかの要因で製品の魅力が失われている場合もあるようであるが、とにかく原子力を日本の将来のエネルギーの中でどう位置づけるかを決めるには、まず原子力の情報を正しく分かりやすく、速やかに開示できる体制づくりが欠かせない。
その上で国民的な議論をする必要性を痛感させられる。
Posted by hamachan at
11:09
2011年05月08日
批判強まる日本の「情報開示」
前回、福島第1原発の事故について、情報開示が適切でないことを指摘したが、その後、次々と具体的な問題が表面化してきた。
例えば、放射能の影響を予測するシステム、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)で作成された影響予測図が4月中旬までに2枚しか公表されず、政府は5月2日になってようやく、これまで作成していた約5,000枚の予測図を順次公表すると発表した。
この予測図には、原発30キロ圏外の飯館村などへの放射性物質の拡散が早い段階で予測されていたほか、3月12~15日に起こった1~4号機の水素爆発や火災の影響予測が作られていたと言う。
その概要だけでも早く公表していたら、風評や無用な被ばくを減らせた可能性がある。
予測図の公表が早い段階で行われなかったことについて、「不安感を与えてパニックになることを恐れた」という関係者のインタビューがテレビで放映された。
確かに原発事故の影響は、一般には分かりにくいだけにパニックを避けるためにやむを得なかったという考えも理解できない訳ではない。
しかし、予測の根拠を明らかにし、どの程度の確率で当たりそうかについて、きちんと丁寧に説明すれば、少なくとも大きなパニックにはならないのではないか。
むしろ、こうした「情報隠し」があとで判明すると、政府や東電が公表する情報には、「もっと危険な情報が隠されているのでは?」という疑いがつきまとい、信用性が失われる恐れがある。
同じ時期に、ゲームという生活に身近な娯楽に関わるインターネット配信ネットワークにハッカーが侵入し、膨大な個人情報が漏れた疑いがもたれたソニーについても、情報開示の遅れが原発事故と併せて問題になった。
さきに米国などで問題になったトヨタ自動車の大量リコールも含めて、日本は政府も大企業も、情報開示が迅速に行われない体質があるという批判が海外で強まっており、ロイター通信からは「日本企業の技術は一流でも広報は二流」」と、批判されている。
東日本大震災に対しては、国内だけでなく、アフリカの貧しい途上国や、アフガニスタンのように内乱を抱えている国からも義援金が贈られて来たと報道されている。
また、福島原発事故には、今後のエネルギーの在り方ともからんで、その回復に世界中から大きな関心が寄せられている。
こういうときこそ情報は隠さず、正確にいち早く発信する必要がある。
例えば、放射能の影響を予測するシステム、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)で作成された影響予測図が4月中旬までに2枚しか公表されず、政府は5月2日になってようやく、これまで作成していた約5,000枚の予測図を順次公表すると発表した。
この予測図には、原発30キロ圏外の飯館村などへの放射性物質の拡散が早い段階で予測されていたほか、3月12~15日に起こった1~4号機の水素爆発や火災の影響予測が作られていたと言う。
その概要だけでも早く公表していたら、風評や無用な被ばくを減らせた可能性がある。
予測図の公表が早い段階で行われなかったことについて、「不安感を与えてパニックになることを恐れた」という関係者のインタビューがテレビで放映された。
確かに原発事故の影響は、一般には分かりにくいだけにパニックを避けるためにやむを得なかったという考えも理解できない訳ではない。
しかし、予測の根拠を明らかにし、どの程度の確率で当たりそうかについて、きちんと丁寧に説明すれば、少なくとも大きなパニックにはならないのではないか。
むしろ、こうした「情報隠し」があとで判明すると、政府や東電が公表する情報には、「もっと危険な情報が隠されているのでは?」という疑いがつきまとい、信用性が失われる恐れがある。
同じ時期に、ゲームという生活に身近な娯楽に関わるインターネット配信ネットワークにハッカーが侵入し、膨大な個人情報が漏れた疑いがもたれたソニーについても、情報開示の遅れが原発事故と併せて問題になった。
さきに米国などで問題になったトヨタ自動車の大量リコールも含めて、日本は政府も大企業も、情報開示が迅速に行われない体質があるという批判が海外で強まっており、ロイター通信からは「日本企業の技術は一流でも広報は二流」」と、批判されている。
東日本大震災に対しては、国内だけでなく、アフリカの貧しい途上国や、アフガニスタンのように内乱を抱えている国からも義援金が贈られて来たと報道されている。
また、福島原発事故には、今後のエネルギーの在り方ともからんで、その回復に世界中から大きな関心が寄せられている。
こういうときこそ情報は隠さず、正確にいち早く発信する必要がある。
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00:00