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Posted by みやchan運営事務局 at

2013年04月29日

サッチャリズムの思い出

4月上旬、死去した英国の元首相で、アイアン・レディーと呼ばれた保守党のマーガレット・サッチャー女史の経済政策(サッチャリズム)は、それまでの労働党政権と一線を画し、英国病を克服しようとする確固たる信念に基づく妥協を許さないものであった。

政策の中身は、まずインフレ防止に重点を置いたもので、デフレ退治を目指す日本の安倍晋三首相によるアベノミクスとは全く逆に見えるが、自由な競争を促し、経済を回復させるという目標は共通しており、強力な指導力の下で推進する手法も似ている。

サッチャーさんが首相の座に就いたのは、1979年5月である。
小生はその直前から2年間、ロンドンの英国放送協会(BBC)に出向していたが、こんな思い出がある。

その翌年2月、英国の有力紙、サンデータイムズが「間違っているサッチャーさん、間違い、間違い、間違い」という派手な見出しの社説を掲載し、徹底的にその経済政策を批判した。

ところが、翌週の同紙の社説は「正しいサッチャーさん、正しい、正しい、正しい」という見出しで、前週と逆のことを書いたのである。それは前の週の社説に対する読者からの投書を基に、サッチャリズム支持者の主張を掲載したものであった。

さらに1週間後、同紙は「サッチャーさん、英国の世論は二分されている」という社説を載せている。

サッチャリズムは、インフレ抑制のために通貨供給量を最適に保つというマネタリズムを基礎にしていたが、最初はほとんど成果が出ず、特に失業率はインフレが収まったあとも容易に低下しなかった。

しかしサッチャー政権は、1982年に起こったアルゼンチン沖のフォークランド諸島の領有を巡る紛争で勝利を治めて、支持率を回復させ、経済政策も一部修正して政権は11年間続いた。

今でも、サッチャリズムには根強い反対論が残っているようであるが、それでもその後、労働党のトニー・ブレア政権は、以前の労働党のような国有化政策に戻らず、サッチャリズムの大きな土台は引き継がれている。

ただ、こうした大改革には時間がかかると言えそうである。
異次元の金融緩和などの形で、大胆に進められ、株価の上昇、円安などの効果が出ている日本のアベノミクスは例外であろうか。
  


Posted by hamachan at 11:05

2013年04月02日

金融緩和と物価

安倍晋三政権の経済政策、アベノミクスは、実施に移る前から、市場に歓迎され、久しぶりの円安と株価上昇を呼び込んだ。
極めて順調な滑り出しで、発足3か月の安倍政権の内閣支持率も高い水準を維持している。

4月に入って、円安、株高は一服かと思わせる動きが出ているが、アベノミクスに共鳴する日銀の黒田東彦体制も発足し、いよいよ政策実施の本番を迎えており、大胆な金融緩和、機動的な財政運営、それに民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢から成るアベノミクスによって、果たして日本経済はデフレ不況から脱却できるのか、市場が気にし始めたと言えるのではないか。

このうち一本目の矢の積極的な金融緩和策については、これを支持する意見がある一方で、疑問視する議論が続いている。
例えば、2%の物価上昇という10数年来見られなかった上昇率を目標に掲げているが、金融緩和という手段で本当に実現できるだろうかというものがある。

これに対し、黒田新総裁は国会での説明で、物価が低下する要因には安値輸入品の増加、流通の効率化、家計の低価格指向などがあると指摘したうえで、これまでにない大胆な金融緩和の方針を強調した。

また、物価が2%を超えて上昇し始めたら、デフレ脱却どころか、インフレが止められなくなるのではないかと出口を懸念する議論もある。
インフレを止めるには、金利引き上げが必要になるが、長期金利が上昇すると、国債の利払いの面で財政負担が重くなるため、財政当局と日銀との利害が対立し、非常に難しい政策運営を迫られることになりかねないというのである。

消費税が来年4月に5%から8%に引き上げられ、さらに翌2015年10月には、10%になる予定である。
消費税が上がると、物価もかなり上昇するとみられる。
日銀の物価2%引き上げはこれとは別であり、併せると物価上昇の負担は重くなりそうである。

消費税引き上げまでの1年間は駆け込み需要が広がり、景気もよくなるかもしれないが、その先は賃金などの収入が増えなければ、生活が苦しくなることも予想される。

こうしたいくつかの懸念を払しょくするには、政府・日銀がデフレ脱却とその後の影響についての手法や道筋について、もっと丁寧に分かりやすく説明する必要があると思う。
  


Posted by hamachan at 23:10

2013年03月17日

失政のつけ

国内の農業関係者を中心に反対論が強く、意見集約が難航したTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に対し、安倍晋三首相が3月15日正式に参加すると表明した。
ここまで約3年かかっているが、なお根強い反対論がある。

あらためて言うまでもなく、TPPは参加各国が工業製品や農産物などの関税を撤廃して、真に自由な貿易を実現しようとする協定である。
既に交渉に参加している11か国でそのルールづくりが進められている。

政府の試算によれば、日本はTPPに参加した場合、10年後、価格の安い農産物の流入により、農林水産業で生産額が2.9兆円(実質)減少するが、一方で工業製品の輸出増加や安価な輸入農産物の消費拡大が期待でき、実質GDP(国内総生産)で、差し引き、3.2兆円押し上げる効果が見込まれている。

しかし、マクロ経済の試算がどうであろうと、農業を基幹産業としている地域の人々は、これで納得するとは思えない。
コメや砂糖などを聖域つまり、関税撤廃の例外として守っていけるのかどうか、交渉の行方によってなお論議を呼ぶ可能性がある。

消費者の目で言えば、日本の農産物の価格は全般に輸入品より割高である。
比較的競争力のある野菜でも、南半球のニュージーランドから輸入される南瓜が同じ種類の国産品より、ずっと安く売られている。
コメのように、味がよいものを高い価格で輸出している例はあるが、限られている。

農業の生産性を高め、競争力を付けなければならないことは、随分早くから言われていたことなのに、歴代の内閣が対応できなかったことに問題があると思う。
政府の方針がくるくる変わる「猫の目農政」に対する批判もある。

農林水産業に対するこうした失政の原点に立ち返り、新しい成長戦略の中にしっかり位置づけていくことが交渉を進めるうえでも大事ではないか。

  


Posted by hamachan at 16:06

2013年02月23日

円安頼みの限界


年末以来、日本経済は、円安・株高の傾向が続き、後退していた景気も改善の方向にあるとみられるようになった。
金融緩和など3本の矢によって、慢性的なデフレからの脱却を目指すというアベノミクスのアナウンスメント効果が大きく影響しているようである。
円安は特に、自動車をはじめとする輸出産業に大きな利益をもたらしていると報道されている。

2月中旬に相次いで開かれた二つの財務相・中央銀行総裁会議、つまりG7(主要7カ国)と、G20(20カ国・地域)の会議では、日本を名指しにはしなかったものの、海外の新興国などからは、日本の円安誘導に対する懸念が示された。
その後の為替市場では、こうした海外の批判が効いてきたのか、円相場は小幅な値動きになり、1㌦=90円台前半で推移している。

円相場が今後どう動くか、予断を許さないが、一方的な円安で、国内でも輸入を中心にデメリットが出て来た。
輸入に依存している原油価格の上昇で、ガソリンの値段がじりじりと上昇し、中小企業から悲鳴に近い声が出ているほか、電力料金への波及も心配されている。

政府は、こうした円安の下で日本経済がデフレ不況の状態から脱却出来て成長に転ずれば、円安のデメリットも薄らぐと考えているようであるが、内外に円安警戒感が出ているだけに、一方的な円安頼みは、このままでは限界に来ているとも言えるのではないか。

心配なのは、ここまでの円安・株高が主として、安倍政権のアナウンスメント効果によるものだとすれば、それが実現しないときには、逆効果が起こるおそれもあるという点である。
さし当たっては、次期日銀総裁の人事がどうなるかが市場の注目点であろう。  


Posted by hamachan at 19:42

2013年02月10日

社会面の記事から

2月8日付け各紙(九州版)社会面に、母親の遺体を放置した疑いで兄弟二人が逮捕されたという記事が掲載された。
宮崎県南端の串間市で起こったもので、逮捕されたのは、39歳(無職)と38歳(会社員)の兄弟である。

二人の母親(60代後半)は、昨年夏に死亡したが、ベッドに横たえられたまま白骨化していた。
父親が市内の高齢者施設に入っており、施設利用料の滞納が目立つため、市職員が容疑者宅を訪問して分かったと言う。

警察の調べでは、この兄弟は経済的に苦しく、年金受給を途絶えさせないため、遺体を放置した可能性があるというのである。
この日の新聞報道では、これ以上詳しい内容は明らかでないが、一般的な貧しさ対策について考えさせられた。

例えば、最近、不正な受給者が話題になったりした生活保護の問題である。
受給者は、増加傾向をたどり、2012年10月現在、過去最高の214万人になっている。
生活保護費のうち、食費や光熱費に充てられる生活扶助費は、今年8月から引き下げられることも決まった。

専門家の分析では、所得や資産が生活保護を受けられる水準にあっても、実際に給付を受けている世帯は、非常に少なくその8分の1程度しかないという推計もある。
多くの日本人には、貧しくても生活保護は受けたくないという気風が根底にあると言えるのだろうか。

こうした人々は、家族の支え合いなどで何とか暮らしているのかもしれない。
しかし、日本経済の成長を一層推進しようという政策がとられようとしているこの時期に、貧困層がこれ以上広がらないような仕組みをもっと充実させる必要もあるのではないか。

国際的な自由競争に付いていけなくなった人、十分な学業や職業訓練を受ける機会に恵まれなかった人などが自立できるような社会をきめ細かく構築しなければならないことを痛感させられる。
  


Posted by hamachan at 19:38
プロフィール
hamachan
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浜野崇好(はまのたかよし)

経済コラムニスト



1935年6月宮崎市生まれ



NHK経済記者・解説委員を経て、宮崎公立大学学長・理事長。

退任後、フリーの経済コラムニストとして活動。



クローバー浜野崇好の

オフィシャルサイト

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